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集水ボーリング保孔管の技術資料

集水ボーリング保孔管の鋼管材使用の原則 の再確認

集水ボーリング保孔管材料は、国土交通省土木工事積算基準では、原則はVP管(塩ビ管)だが、活動中の地すべり地ではSGP管(鋼管)となっています。これがルールです。かつてのように、地すべりブロック外からブロック内への地下水流入を防ぐための対策が行われず、専ら地すべりブロック内から地下水排除工を行うようになっていますので、「活動中の地すべり」地内で大半は対策が行われているはずです。しかし、特に都道府県で用いられる集水ボーリング保孔管は塩ビ管が主流となっています(単に安いから?)。どの時点で、どういう判断で塩ビ管主流になったのかを調べていますが、その明確な答えは見つかりません。

実際、塩ビ保孔管で施工された箇所では、滑り面位置付近で破断している例が報告されており、「地すべり活動が懸念される箇所での集水孔の孔種は、せん断に対してある程度の抵抗および変形する防錆処理を施した鋼管等を採用すべきである」と指摘されています。

さらに、施工業者さんはケーシング引抜時に塩ビ管が割れてしまい、割れた材料を地中に捨て、再掘削するというトラブルに頻繁に見舞われ、発注者の承諾を得て鋼管に変更していることも多いようです。中には、割れて切れてしまったけど、検尺棒を入れたらなんとか所定の深さ入ったということで済ませている例もあるかもしれません(割れた管が地中から回収し産廃処理し、さらに再掘削してお金をもらえない新しい管を購入して挿入する、というのは相当大変なことですから)。

  • 京都府の某地すべり地での利用例:1
    京都府の某地すべり地での利用例:1
  • 京都府の某地すべり地での利用例:2
    京都府の某地すべり地での利用例:2 サビレス管で施工トラブル、管材の変更、工期の大幅遅れ等はありません。
  • 集水ボーリング保孔管の鋼管材使用の原則:1
  • 集水ボーリング保孔管の鋼管材使用の原則:2
  • 集水ボーリング保孔管の鋼管材使用の原則:3

現場では確実な施工ができることが最重要

ベテラン工事屋さんはこう言っています。

「設計時には集水性能を期待しているが、現場では確実な施工ができることが最重要。そのためには強度の強い保孔管が必要。集水性能は重要視しない」

某県庁の砂防職の方(談):「集水効率が高いといって宣伝に来られるメーカーさんが多いが、地すべりの排水ボーリング工で集水効率の高さは全く魅力的ではない。強度が高く、施工性が良く、長寿命というサビレスのコンセプトの方が単純でわかりやすい」

九州で実施された集水ボーリング工事で、施工した工事屋さんはこう言っています。「設計で採用されていた集水効率が良い○○パイプ(塩ビ系)は、ケーシング引抜時にジャミングで割れてしまったので、半分以上を鋼管(SGP)に変更してもらいました」。変更時に確かに集水効率は重要視されていません。

土木技術資料53-9(2011)

地下水排除工のボーリングの施工実態に関するアンケート調査について(その2:保孔管編)

当社はこの共同研究にはパイプ材料を提供する以外は参画していません。企画段階から集水性能を重要視し、特定の製品のための共同研究に感じられたからです(実際にそうだったかどうかはわかりません。上記の土木技術資料を読む限り杞憂だったように思います)。当社は地すべりの集水ボーリング工に高い集水性能が必要だとは考えていません。むしろ施工性・強度・長寿命が最重要と考えています。

太田ジオブログ

強度のあるパイプに変更する

動力を必要としない(=ランニングコストがかからない)重力排水において、集水効率が高いことが地すべりの安定性にどう影響するのか見えてこない。多少集水効率が落ちても、24時間休みなく排水する施設なのだから・・・

塩ビ系保孔管破断の理由

孔壁崩壊により引張力が作用する、滑り面活動によりせん断力が作用する。

保孔管が地中で破断するのには理由があります。集水ボーリングは、φ90の径でプレ削孔し、そこに外径48.6mm(呼び径40)か、外径60.5mm(呼び径50)のストレーナー加工した保孔管を入れます。プレ削孔した穴が崩れなければ、移動土塊が動いたところで引張摩擦はかかりません。しかし、実際には孔壁は崩れます。崩れた後は、土と保孔管の摩擦で、移動層が動いた場合引張力がかかります。それが、極限引張力を超えれば破断します。NEXCO論文に、「想定されていた滑り面位置で破断していた」というのは孔壁が崩れていて引張摩擦力が作用したかということでしょう。場合によって(活動度が高い場合には)は、滑り面活動によってせん断破壊が発生することもあると思います。いずれにしても、動いている土塊の中に差し込んで、壊れては困るものについては、高強度にするというのが鉄則です。

  • 塩ビ系保孔管破断の理由

浸透水は上から下に流れ、保孔管に入った水は下の穴から抜けて落ちるので、上側にだけストレーナーをあけるのが正しいという論を張る人がいます(そんな製品もあるやに聞いています)。これは完全な間違いです。ストレーナーから保孔管に入る水は飽和地下水で、浸透水のようなサクションのある不飽和部を通る水は上側からは入りません。むしろ、上側の穴は不要で、下側の穴だけで良いという方が正しいのです。

崩れた土がどのくらいの摩擦力になるのか

崩れた土がどのくらいの摩擦力になるのかは、アンカーや鉄筋補強土の摩擦力で試算しました。締め固めるわけではないので、おそらくN値=5程度でしょうから、砂礫N=10のτ=0.1~0.2MN/m2なので(グラウンドアンカー設計施工基準同解説)、τ=0.05MN/m2くらいを考えておけばよいでしょう。

すると塩ビ管の場合、L=2~3m分の摩擦力で限界を超えます(下表参照)。1箇所の継ぎ手に何m分の摩擦力が集中するのかはっきりとはわかりませんが、このくらいは作用するでしょう。したがって、地すべりが活動すれば塩ビ管は破断する、と言っても良いと思います。逆説的に言えば、塩ビ系保孔管が破断していない地すべりは活動していないと判定できる、ということです。鋼管系の保孔管については高強度なので破断しません(もちろん大変形時にはダメでしょうけど)。

塩ビ系の保孔管が破断するとどうなるか

塩ビ系の保孔管が破断すると、地中奥深くから集めてきた地下水を、滑り面付近で地すべり土塊内に放出するということが起きます。滑動中の地すべりを止める役割のはずが、滑りを助長するということになる恐れもあります。活動中の地すべり地では、原則通り鋼管を使うようにしましょう。「せん断に対してある程度の抵抗および変形する防錆処理を施した鋼管」としては、サビレス管などがあります。

  • 塩ビ系の保孔管が破断するとどうなるか

とりあえず・・・が負の資産を造る

高度経済成長期に大量に造られた大規模造成地内の谷埋め盛土が、強い地震動で滑動崩落したり、地表陥没するということが知られるようになり、容易に修繕できない「負の遺産」として認識されるようになりました。

基本ルールが守られず、低強度保孔管で地下水排除されている数多くの「活動中」の地すべり地。保孔管破断は、日常点検で見えないため気が付いた時には規模の大きな地すべり滑動になってしまったとき、、、ということになりかねません。これも負の遺産と言えるかもしれません。

現状でも、排水ボーリングはSGP90Aなどの鋼管が使われるのが全国標準となっています。排水ボーリング保孔管が鋼管で、集水ボーリング保孔管が塩ビと使い分けている理由も実は明文化されたものがありません。φ100mmの塩ビは弱くてφ50mmの塩ビは十分強いという理屈でしょうか?φ100mmなどは下水道では塩ビ管が主流で使われているわけですからそうでもなさそうです。地すべり地内で使うのだから本当は高強度の鋼管を使いたいのだけれど、集水ボーリングは延長が長いのでイニシャルコストを抑えるために、塩ビ管を使い、その後は考えることなく前例に従っていた、ということのようです。

また、ひとつの想像ですが、価格の問題もさることながら、SGP管の錆によるストレーナーの目詰まりに対するアレルギーが塩ビ管に走らせた原因ではないかと想像しています。日本を代表するK地すべり地などは、ほとんど100%SGP管が使われていました(現在は錆ないサビレス鋼管)が、メッキされていないとはいえSGP管は多少錆ても丈夫なものです。しかし、φ5mmのストレーナーの穴に錆が出てくるということはあるようです(排水量の多い場所は錆もあまり出ませんが)。

大地震時の盛土崩壊対策としても活用可能:排水タイロッド工法、PDR工法

  • 排水タイロッド工法、PDR工法

参考資料

恒久集水ボーリング保孔管「サビレス」資料

集水ボーリング保孔管資料

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