太田ジオメールマガジン[216]~長寿命化計画にはサビレス、の巻~

社会インフラの長寿命化計画は、造る時から始まっています

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━ Vol.216 ━ 2016.9.26━

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┃★社会インフラの長寿命化計画にサビレス!
┃  地すべり対策を受注する会社でも、まだサビレスの存在が知られていない
┃  ことが判明したので、その話題です。
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■社会インフラの長寿命化計画にサビレス!
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社会資本の長寿命化計画が平成25年11月にまとまり、その実践が始まっています。
親しいコンサルのかたに話をその話をしたところ、「サビレス?何それ?」とい
う反応でしたので、宣伝が足らないと思いメルマガに書くことにしました。

サビレスは、新技術というにはちょっと古い技術になりました。NETISには2003
年に登録しているようですので、地すべり地に初めて使われ始めたのは2002年ご
ろだと思います。

サビレスのNETIS
http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Search/NtDetail1.asp?REG_NO=KK-030021

ちょうどそのころ、亀の瀬地すべりの事務所の方から、相談を受けました。亀の
瀬地すべりの対策は歴史が長く、その当時ですでに施設の老朽化問題が出始めて
いたのです。

活動中の地すべり地では鋼管(SGP管)を使うのが原則なので、亀の瀬地すべり
地はSGP管が保孔管でした。直轄地すべり地はSGP管が多かったと思います。しか
し、当然サビの問題がありました。恒久化するのに何か良い知恵はないかという
ことで、当時排水補強パイプに用いていた高耐食性メッキを、水抜ボーリング保
孔管に応用したのがサビレスです。

このようにサビレスを用いるようになった理由は、ズバリ「施設の恒久化」でした。
いまの長寿命計画を先取りしていたような感じです。

そのころから、集水ボーリング保孔管にはいろいろな種類のものが出始めました。
サビレス管は高強度・長寿命が売りでしたが、他の管は集水効率向上を目指した
もので材質としては塩ビ管のものが大半でした。

いまは長寿命化が命題になっていますが、当時はコスト縮減が大命題でした。サ
ビレス管はイニシャルコストは高いですが、ライフサイクルコストが安いという
ことで、主だった地すべり地でたくさん使っていただきました。長寿命=コスト
縮減ですから、本質的には変わっていません。

各種資料に書かれているものをご紹介します。

恒久集水ボーリング保孔管(サビレス)KK-030021-V
(地すべり地における地下水排除ボーリング工の排水性能調査)土研
http://www.db.pwri.go.jp/pdf/D8062.pdf#page=130
・長寿命(80 年以上)であり、ライフサイクルコストが安価(従来製品の 1/2
程度)である。
・ 高強度(3 点曲げ試験で塩ビ系の約 10 倍)のため、微小変形のある地すべ
り土塊内でも破断しない。
・ 高強度のため保孔管とケーシングが供回りするような場合でも保孔管が破損
せず安定した施工が可能。また排水トンネル内から高角度で打設する際、脱落防
止のため先端部を打撃により食い込ませるが、その際も破損しない。

譲原地区直轄地すべり対策事業
恒久集排水ボーリング保孔管は、高耐食溶融メッキ(ZAM)を採用し、材料の
耐用年数が格段にアップしたことから、ライフサイクルコストを削減することが
出来ます。
(平成27年11月25日)コスト縮減率 49%(50年間で評価)
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000636641.pdf#page=19
(平成24年11月26日)コスト縮減率 75%(80年間で評価)
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000069947.pdf#page=25
(平成17年1月27日)コスト縮減率 52.4%(80年間で評価)
http://www.ktr.mlit.go.jp/honkyoku/kikaku/jigyohyoka/pdf/h16/04siryo/siryo1-3.pdf#page=21

でも、サビレスには、もっと重要な機能があります。それは高強度ということです。

強度が高いことが必要なまとめ
http://www.ohta-geo.co.jp/tech_rep/20160926sabiless.pdf

国土交通省土木工事積算基準では、「活動中の地すべり地区で、挿入後せん断、
よじれ等により保孔管破損の恐れのある場合はSGP管(ガス管)とする」と規定
されています。せん断やよじれは、活動中の地すべりでは当たり前に起きること
です。その前に、活動していない地すべり地区に対策するということは(建前と
して)あるのでしょうか?

対策の必要がある「活動中の地すべり」では、積算基準に従えば、多くの場合保
孔管に鋼管が必要になります。ところが、鋼管は錆びやすく、イニシャルコスト
が高いこともあって、国交省直轄地すべり地以外ではあまり使われていませんで
した。その代わりに、塩ビ管が使われています。塩ビ管の強度は弱く、特に継手
部が弱いので、しばしばそこで破断しています。

それらのことは、土木研究所の『地すべり防止のための水抜ボーリングの実際』
にも書かれています。SGP管もメッキ管に変更されつつあることも書かれていま
す。それを満たすのが「サビレス」です。

NEXCOでも既設の水抜ボーリング孔(塩ビ)を観察したところ、破断しているの
が見つかり、「集水管のせん断を避けるため、地すべり活動が懸念される箇所で
の集水孔の孔種は、せん断に対してある程度の抵抗および変形する防錆処理を施
した鋼管等を採用すべきである」と書かれています。

基準通りに材質を選択するのであれば・・・塩ビ管を選択する場合には、「ここは
集水管のせん断の心配がない活動のない地すべり地なので塩ビ管を選択する」とい
う説明書きが必要になるでしょう。
(編集後記)
地すべりに使う資材のことは、一般の人が知らなくても、専門家は15年も経った
話ならご存じだろうと思ったのが甘かった、ということを痛感しました。新しい
人たちも業界に入ってくるのですから、不断の宣伝に努めないといけませんね。(H.O)