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デジタルスケッチ SUGDAS |
■特徴 |
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1.技術のポイント |
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斜面崩壊直後の現場には防災・減災に役立つ情報が豊富にある。しかし、「とりあえず」見に行っただけでは、写真とスケッチと記憶に残されるだけで、感覚的な議論はできても定量的な議論につながりにくい。しかし「あらためて」詳細な調査に出かける機会は意外と少ないものである。このシステムは、その「とりあえず」現場にいった時に定量的な情報を得るための技術である。
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2.開発の背景 |
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豪雨や地震で突然発生した災害に対する対応には、早期復旧の側面と、今後の防災・減災に活かすためのデータ収集という側面がある。前者の場合には、詳細な地質踏査・測量・解析・設計が行われ工事に至る工程となるが、後者の場合にはしばしば不十分なデータ収集で終わってしまっているという実情があった。
斜面崩壊を例にすると、熟練した技術者が被災地に緊急調査に入り、崩壊現場を踏査し、写真撮影し、歩測・目測で計測し、スケッチして情報を持ち帰るのが従来の一般的なやり方である。しかし、このデータから定量的な議論を行うことは困難であった。あらためて計画を立て現場で詳細調査を行う際には、現場状況が変化している場合もしばしばあった。
もし、専門的な測量の知識を持たなくても、地盤技術者が地形データや地層境界位置等のデータを計測できれば、これまでなかなか得られなかった貴重な初期段階のデータ収集が可能となり、防災・減災等に役立つ知見が得られるものと考えられる。従来のアナログ的な踏査・歩測・目測・スケッチという作業を、最新のIT技術を利用してデジタル的にスケッチすることを目的としたのである。
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3.開発の経緯 |
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前述の目的を実現するために、迅速さおよび簡易さを最大限に優先した。崩壊直後の現場には実働1人で行く場合も多く、また崩壊地内に人が入るには危険な場合も多々あるので、1998年頃に市販されるようになったコンパス付きノンプリズムレーザー測距儀を用いることとした。この計測器を用いれば、測量の専門知識がない地盤技術者が、離れた場所から安全にかつ迅速に3次元座標を取得することができる。しかし、当時はRS232Cインターフェースで座標データを計測器から出力することはできても、そのデータ処理に関しては整備されていなかったため、データコレクター、データ取得用のソフトウエア、等高線図作成処理ソフトウエアなどは既存製品の組み合わせや、自らプログラミングすることによって開発する必要があった。現場には二度と足を運ばないことを想定して、データ取得不足は現場で確認できるようにするため、携帯性・操作性を重視した。また、日進月歩のIT技術でシステムの陳腐化が起きにくいように、インターフェースやOSが変わってもバージョンアップにより技術に追随する商業ベースで市販されているソフトウエアを最大限利用し、その都度プログラムを作り直す部分が最小限になるようにした。さらに、データ処理の迅速性を重要視する以上、計測されたデータは、専用フォーマットを用いず、データ変換等を行うことなく実務にそのまま利用できるよう業務で日常的に用いているCADソフトをインターフェースとして使用することとした。
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4.システムの具体的な内容 |
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4.1 計測機器
現場での計測には、コンパス付きノンプリズムレーザー測距儀およびデータコレクターを用いる。その合計重量は1kg未満である。現場で取得したデータをその場で等高線図等として確認する場合には、ノートパソコンを用いるが、それを加えても2kg前後と軽量であり、リュックサックで持ち運びできる。
使用するコンパス付きノンプリズムレーザー測距儀は、計測地点の反射率が高い場合にはターゲットなしで300m程度まで計測可能(プリズム使用時最大5km)であるが、土砂や岩盤の崩壊地の場合には実積として斜距離150m程度までの計測となる。計測器としての精度は、測距精度±10cm(最小単位1cm)、垂直角度精度±0.3゜(分解能0.1゜)、方位・水平角精度1゜未満(分解能0.1゜)であり、公共測量規定で定める精度はないが、崩壊地の地形データ等を取得し定量的な議論をすることが可能なレベルの精度を有している。
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4.2 計測方法
計測は、レーザー測距儀のファインダーから見える場所の座標を、上面の赤いボタン(計測スイッチ)を押すことにより1点1点取得する。単純な地形の箇所は密度を粗く、急激に地形が変化する箇所は密度を濃く計測することにより計測する。測定点の決定から座標取得の時間は、1地点あたり2〜3秒であるので、10分あたり200〜300地点の計測が可能である。
また、地層境界線や構造物など他とは別に取り扱いたいデータは、あとで判別できるフラグを測点No.につけることで区別する。計測は、地形境界線(滑落崖など)、地層境界線など、通常のスケッチで識別する要素について順番に適宜フラグをつけてデータ収集する。その後、その間の地表高をできるだけ計測密度が粗となる範囲が少なくなるように計測する。この手順を踏むことにより、その後のデータ処理で定量的なデジタルスケッチ図を作成しやすくなる。
下図に計測状況を示す。レーザー測距儀は、三脚に固定すると計測器設置位置の誤差を少なくすることができるが、崩壊地の調査などでは携帯性を重視し、三脚を使わず手に持ったままで計測することが多い。
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4.3 作図作業
データコレクターのデータをコンパクトフラッシュメモリを介してパソコンに送り、その座標をCADインターフェース上に読み込む。全体の座標を読み込む前に、滑落崖や、地層境界線をトレースしながら計測したデータを先に取り込んでおき、その点を連結して境界線を引きスケッチ図を作成する。その後、残りの座標データを読み込み等高線作図を行う。なお、未崩壊地などの樹木等があり計測できなかい場所についてはCAD上で同じ高さになると想定される位置に標高値を追加記入することにより、計測データと同等に取り扱える。
次に、標高データを等高線として図化する。等高線化するアルゴリズムとしては地形データの取り扱いに優れた空間統計的手法のひとつであるKriging(空間的相関を考慮した回帰モデル)法を用いる。Kriging法はもともと鉱床の空間分布予測を行う手法であり, 空間現象を連続空間確率場でモデル化し、
観測されたデータから任意の位置での確率場の値を予測す手法である。
また、その過程で生成されるワイヤーフレームモデル上に、写真などのラスターデータを貼り付けることにより鳥瞰図を作成することも可能であり、現場状況の理解に役立つ。 |
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5.既存技術・類似技術等との違い |
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当該システムは、従来踏査や歩測・目測または簡易なメジャーによる計測とスケッチで行われていたアナログ的な現地調査を、迅速でかつ定量的なデジタルスケッチとする技術である。このため、既存技術・類似技術として対比されるべきものは、(1)現地踏査などのアナログ的手法、(2)測量技術者による測量機器を用いた測量作業および地質・地盤技術者の地表地質踏査、の技術である。 |
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6.システム利用の効果 |
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豪雨や地震などで数多くの斜面崩壊が発生し現地調査・現地視察に訪れる機会は多いが、現地で簡単なスケッチをし、写真を撮影するだけに終わることが多い。もちろん定性的な崩壊原因等を検討する上では有益なことであるが、定量的なデータがないことにより研究や防災・減災への応用という点では十分でないと考えられる。一方、詳細な測量を実施するとなると、時間的・費用的な理由から、数少ない限られた場所においてでしか実現できないのが実情である。
「迅速な斜面情報把握システム(SUGDAS)」は、ちょうどそれらの隙間部分を埋める技術であり、機器が軽量で操作性が良いことから、数々の斜面崩壊現場において地形等の計測を実施し、崩壊地形・地質図作成、崩壊土量計算、概略安定解析などを実施し効果を上げてきた。崩壊規模が小規模な場合には、簡易な対策工の設計も行うことができた。 |
7.適用実積 |
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土木学会をはじめとした研究目的・事例収集目的で実施した計測としては、下記のようなものがある。このうち、(2)の土砂災害調査で得られた成果を参考のために示す。 |
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2003年7月九州地方豪雨災害調査の例 |