以下は、宅地盛土の耐震補強工事における確率的手法例です。確定論的手法はこちらです。

確率的評価方法
<考え方>
 ・地盤にはばらつきがある(土の物性値のばらつきを設定)
 ・自然現象にはばらつきがある(地震力の不確定性を設定)
 ・対策効果にもばらつきがある(摩擦力や、工業製品製造の許容誤差の設定)
これらを設定し、コンピューターで自動的にばらつかせ、多数試行計算を行い安全率のばらつきなどの統計量を得て、総合的に判定する方法である。この手法のことを「確率論的手法」と呼ぶ。
 従来のばらつきを考慮しない方法は「確定論的手法」と言い、閾値と計算値の比較を行うだけで評価ができるため簡易であることから従来用いられてきた。しかし、ばらつきを考慮すると、例えばFs=1.0の答えが得られた場合、50%の確率でFs<1.0となることを意味している。このため、確定論的手法においては設定する物性値などの評価時点で「安全側に立つ」というばらつきに担保をもたせるという技術的解決方法がとられている。ただこの方法は科学的発展性が薄い手法であり、技術者・研究者は確定論的手法でアウトプットを出す場合でも、自身は確率論的手法で安全性を担保するという二重思考を行う必要がある。(技術者の二重思考は、顧客に対する情報伝達にとって重要なテクニックであり、二重基準とは本質的に異なります)
0.考え方
1.せん断(破壊)モード
2.引っ張り(破壊)モード
3.統計量の設定例
4.アウトプットのグラフ例
せん断モード(変位量小;Fs<1.0の場合、引っ張りモードに移行すると仮定する)
 ・平均安全率Fs=1.23
 ・破壊確率PF=0.8% (試行計算1000回のうち8例がFs<1.0)
引っ張りモード(変位量大;せん断モードでFs<1.0の時に移行すると仮定)
 ・平均安全率Fs=1.02
 ・破壊確率PF=40.4% (試行計算1000回のうち404例がFs<1.0)
 ・総合破壊確率=0.8%×40.4%=0.32%
<< 判 定 >>
地盤のばらつき等により、
1000回のうち3回がFs<1.0となり
破壊に至る可能性がある(破壊確率0.3%)
99.7%の確率で破壊しないと予測される・・・OKと判定
諸値の統計量(下記の例は、一例です)
■土の物性値のばらつき
 ・粘着力、内部摩擦角、重量はある程度ばらつく
■地震加速度のばらつき(一例です)
 ・kh=0.25だが、場合によっては標準偏差で0.05のばらつきが生じると仮定
 ・kv=0だが、0.1程度の鉛直地震力が作用するかもしれないと仮定
■対策工のばらつき
 ・PDR1800:ソイルネイリングの周面摩擦力(土の締まり具合により異なる)
 ・M-pile:せん断補強材のせん断力(JIS規格の下限まで許容される)
確率的計算のアウトプット
各要因に対応したヒストグラム・感度分析・安全率の散布図など

せん断補強材の計算例

ソイルネイリングの計算例
(赤色はFs<1.0)
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0.考え方
1.せん断(破壊)モード
2.引っ張り(破壊)モード
3.統計量の設定例
4.アウトプットのグラフ例
※当工法は資材・工法ともに知的財産権で保護されています。ただし、施工に関しては制約をかけておりませんので、どの工務店さんでも「恒久排水補強パイプ」を用いて施工することができます。コンサルタントや建築士さんがこの工法を設計されることに関しても制約はありません。