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最悪想定の安定解析への対応

2011年3月11日の東日本大震災までは、学術的に確定していない巨大な自然現象は「想定外」として考慮しないという手法でしたが、3.11災害があまりにも甚大で「想定外」で免罪されるレベルを超えていました。その反動で、今度は証拠には乏しくても学術的に想定できる最大規模の自然現象は起きること、と考え「最悪想定」をする流れができました。
 
「考慮しない」と「考慮する」の違いは、発生確率に対するリアクションの違いに過ぎないのですが、確率的思考はまだまだ理解する側も説明する側も不慣れなようです。「最悪想定は近々必ず起きる」というメッセージになっています。
 
いろいろあるにせよ、企業としては最悪想定に対応した技術コンサルティングが必要となりましたので、その対応を行いました。対応したのは以下の2つです。

(1)地すべりの3次元安定計算の最悪想定対応
(2)谷埋め盛土の側方抵抗モデル計算の最悪想定対応
 最悪想定3次元安定解析

当社が行っている3次元安定計算は、滑り面が接する地質・土質に応じて滑り面強度を変更できるという特徴があります。とはいっても、物体が氷の上を他に何の抵抗も無く移動する時と、ざらついた側壁にこすれながら移動する時では、移動しやすさが違うという当たり前のことを実現しているだけです。この方法を用いると、地すべりの安定計算で、「実測値のみを用いて安全率が演繹的計算で実現できる」ということもわかり、学術学会等で発表し、ある程度は検証されていると思っています。

岩手宮城内陸地震時には、鉛直4Gもの加速度が計測されたそうです。山が浮く、山が飛び跳ねるというレベルの揺れです。「最悪想定」を考える場合には、水平震度だけでなく鉛直震度も考慮する必要があります。また、そのような揺れが来た場合には飽和地下水帯には著しい過剰間隙水圧が発生するはずです。その対応も必要になりました。

 
 最悪想定谷埋め盛土の地震時滑動崩落解析

谷埋め盛土の地震時滑動崩落現象の解析には、次の2つがあります。
(1)近年都市部近くで起きた「普通の大地震」で滑動崩落が発生する可能性が高い箇所を「予測する」ための解析
(2)底面のフリクションが完全に失われる「最悪想定」でもって、対策工の設計をするための解析

最大頻度想定で予測し、最悪想定で設計する、というのが滑動崩落対策になります。
滑動崩落時の計画安全率は、確定論的方法だと1.00あるいは1.05とされますが、複雑な現象を単純な外形基準で計算しているだけだということを考えに入れると、ギリギリの閾値を使うのはあまりにも冒険が過ぎます。確率計算を試行した結果、計画安全率を1.4程度にすると、破壊確率が10%以下に収まるようです。

必要抑止力の算定法は、通常の地すべりと同じですが、単位は宅地単位(200平米程度)にすると分かり良いでしょう。上記の例では、最悪想定でも必要抑止力=2416kN/200m2=12kN/m2と小さいものです。D25鉄筋のせん断強度は許容値でも37kNほどありますので、3m2に1本程度の割合で、D25の鉄筋が地山まで刺してあれば、計算上は滑動崩落しないことになります。高強度肉厚鋼管杭列などが必要となるわけではありません。
 
あとは、宅地盛土の変形をどれだけ抑えて、家屋やライフラインへの影響を最小限にするかという付加効果を設計者の判断と依頼者の懐具合で決めるということになります。

上記のソフトは、フリーソフトです。谷埋め盛土宅地の地震時危険度自己診断のページから、谷埋め盛土の地震時危険度簡易判定プログラム【太田-榎田モデル(側方抵抗モデル)】をダウンロードしてお使いください。(ただし、その結果に関するいかなる責任ももちません)

解析・設計依頼は個別にお引き受けします(有料です)。メールまたはお電話ください。

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