フリクションレス(摩擦なし)状態にはどんなものがある? | |||
谷埋め盛土の底面(地震時) | 盛土後時間の経過とともに、地中洗掘によって盛土と地山との境界部は細粒分の流出が発生し緩い状態となる。そしてそこには飽和した地下水がある。 地震時に強震動を受けると、飽和地下水があり、緩くなった盛土最下部からは急に地下水が移動できないので液状化現象(過剰間隙水圧発生)が起きる。これはフリクションレス状態である。車のハイドロプレーニング現象とよく似ている。 実際には過剰間隙水圧が発生しても強度は残存すると思うが、評価しきれないので、技術的には強度ゼロ(フリクションレス)と見なせばよい。 [参考]パイプの話(新藤先生) |
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ハイドロプレーニング現象 | 自動車学校で誰でも習います。自動車が水の溜まった路面を走行中、タイヤと路面の間に水が入り込み、排水能力を超えるとハンドルやブレーキがきかなくなる現象です。これもフリクションレス。 サーキットレースでは、晴れていれば、設置面積の大きいスリックタイヤ(左)が使われるが、雨が降ると排水ができないので滑りやすくなるため、レインタイヤ(右)で過剰間隙水圧が発生しないようにしている。 |
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ホバークラフト | いわずとしれたホバークラフト。フリクションレスで進みます。スカートに穴を開ければ浮かなくなります。 | ||
リニアモーターカー | いわずとしれたリニアモーターカー。フリクションレスで進みます。磁力の力で側壁にぶつからないようにしていますので、サイドフリクションは効きません。傾斜していればそちらにいつまでも動いていきます。幅/深さ比は関係ありません。 | ||
エアーホッケー | いわずとしれたエアーホッケー。フリクションレスだから楽しく遊べます。コインが切れると空気が出なくなり浮かなくなります。 | ||
プレートの沈み込み | アスペリティ | ||
地震がプレートの沈み込みで起きていることはご承知の通り。いまはプレート境界の固着域(アスペリティ)の存在が地震の原因だと言われています。アスペリティ以外のところは、ゆっくりとズルズル「滑って」いるのだそうです。岩盤と岩盤がもの凄い圧力で接しているのに、ズルズルと滑ることができるのでしょうか?1995年の地質学会で平朝彦先生の講演を聴いてわかりました。プレート境界面に過剰間隙水圧が作用してフリクションレスになっている!何かの原因で過剰間隙水圧が消散されるか水が存在しないところがアスペリティになっているのでしょう。その「水」は、海洋プレートの上に乗っかっている堆積物に多量に含まれていると思われます。 | |||
※引用した図はWEB上から探したものです。探した場所にリンクを張ってありますので、それで出典明記扱いにしてください。 | |||
対策の方法 | |||
フリクションレスの上盤にある物体の移動や変形を止める方法としては、 (1)力で押さえ込む方法(抑止工) (2)原因を取り除く方法(抑制工) の2通りがあります。常時(地震のないとき)は抑止工に必要な力もそれほど大きくない場合があり、計算方法も確立していることからそれが選択されることが多いですが、地震時は a.外力としての地震動が確定できないこと b.変形量を計算するための地盤の物性値の把握が極めて困難なこと c.地震時にどの程度まで強度が低下するのかを確定することが困難なこと と難しい問題が多々あります。 現在、地震時の土構造物の地震対策が研究されていますが、それらは数値解析を用い、許容変位内に変形を抑えるという手法です。しかし、上記の点から、それは理論建てに利用されることはあっても実際の設計に使うのは極めて困難でしょう。液状化で強度が低下する、繰り返し荷重で強度が低下する、そしてそれらは土の物性値や地震動の外力が「きちんとわかれば」計算可能である、と言われても設計者は怖くて設計しきれません(マニュアル通りにやれば責任は問わないという免罪符があれば別ですが)。「きちんとわかる」ことすらほぼ不可能なのですから。 またそれらの理論は、実験室の水槽、すなわち均質でかつ水の流れがマトリックス流となっている場合のものであって、実際に地下水を支配するパイプ流や不均質な土の物性についてはほとんど何もわかっていません。いまの時点で「計算で地震による変形を制御する」というのは無謀でしょう。単なる当てずっぽうですが、実用化にはあと50年はかかりそうな気がします。そのときには一連の地震活動期は終わっていることでしょう。 [参考]パイプの話(新藤先生) [許容変位法]検索エンジンで調べてみてください |
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盛土構造物の地震時変形においては、過剰間隙水圧除去によって液状化そのものの可能性を排除するのが現実的です。実際の地下水がパイプ流であることを考慮すると、完全に液状化をさせない対策工密度の点が悩ましいのですが、地山・盛土境界の地中洗掘部が鍵を握っていることを考えると、水槽実験よりは効果が高いという相対的な答えは出そうです。 | |||
ちなみにプレート境界の過剰間隙水圧を消散させると、一気にアスペリティが広がって巨大地震が発生するまでエネルギーをため込んだりするのでしょうかね。 |