太田ジオメールマガジン[223]~九州北部豪雨災害、の巻~

平成29年7月5~6日にかけて九州北部豪雨災害が発生しました。
速報は、NPOのニューズレターに書きましたので興味のある方はご覧ください。

都市災害に備える技術者の会ニューズレターNo.48
http://toshisaigai.net/newsletter/newsletter048.pdf#page=2

このメルマガでは、こういう全体の概要を説明するための報告には掲載しないようなことを重点に書いてみたいと思います。前述のニューズレターはデジカメで撮影した写真が主ですが、ここではビデオカメラのズーム機能を使った静止画を中心に書きたいと思います。

(1)流木を堰き止めた砂防ダムのあった妙見川

渓流の一番奥までは行けませんでしたが、遠目に見えていました。表層崩壊ですね。尾根から5~10m下がったところから崩壊が始まっています。頭部滑落崖の高さが揃っているところは注目に値します。私は、それくらいの高さの過剰間隙水圧が作用すると崩壊するからではないかと思っていますが、別の解釈もあると思います。ここは緑色片岩の分布地です。

(2)ため池が決壊した箇所(山田ため池)

決壊した山田ため池の堤体には、はがね土がありました。このはがね土にはセメントミルクのようなものが注入された跡がありました。洪水対策か地震対策かはわかりませんが、強度が不足しているため補強がなされたのだろうと思います。破堤がどのような過程で起きたのかは、現場観察ではわかりませんでした。越水→侵食という過程であればありえると思いますが、満水圧に耐えきれず破堤したということであれば、補強されていてもダメだったということになります。詳細な調査結果を注目したいと思います。なおここは泥質片岩の分布地です。

(3)赤谷川下流には細かな砂が大量にある

赤谷川は、今回調査したなかで唯一の花崗岩類の分布地でした。いわゆる「マサ」が大量に流出しています。河床はこの砂によって見事なまでの一定勾配となっていました。もちろん岩塊もあるのですが。。。砂は水とともに建物の中まで侵入し、水が引いたあとは砂が取り残されています。粘土分が少なく、土木材料としては良質の砂です。

(4)小野川沿いの崩壊

ここは、安山岩類(溶岩、凝灰角礫岩)の分布地です。下側の滑落崖には溶岩(といってもバラバラになっている)の下位に褐色になった凝灰角礫岩がありました(といっても近づいて確認したわけではありません)。拡大してみると、凝灰角礫岩にはガリーが幾筋も発達しています。水は溶岩と凝灰角礫岩との境界から出ていたようです。

上側の滑落崖(これが頭部滑落崖)にも褐色の凝灰角礫岩が見えています。九州での崩壊は、この溶岩(良透水性)と凝灰角礫岩(難透水性)の組合せで発生していることが多いようです。2003年の水俣市宝川内集地区での土石流のもととなった崩壊もこのパターンでした。1枚1枚の溶岩の分布図を作成しておけば、比較的規模の大きな崩壊が発生する可能性のある場所は、ある程度事前に知ることができるのではないでしょうか。