太田ジオメールマガジン[213]~今年の梅雨から技術者魂が喜ぶ斜面調査・解析をしよう、の巻~

今年こそは、科学的・論理的な斜面調査・解析をしましょう。

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━ Vol.213 ━ 2016.7.4━

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┃★科学的・論理的な斜面調査・解析の方法
┃  斜面問題は経験工学といっても、現況安全率を最初に仮定して逆計算する
┃  方法論は、技術者魂を蝕みます。今年から土検棒を使って改めましょう。
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■科学的・論理的な斜面調査・解析の方法
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先日、斜面対策について2つの問い合わせがありました。

ひとつは、崩壊した斜面を切り込んで道路拡幅をしなければならないので、簡易
貫入試験をいっぱいやってボーリング調査もやった。N値4前後の強風化岩だった。
N値から換算したφで安定計算すると安全率が小さくなりすぎるので、現況安全
率を1.0とした。目標安全率1.2設計すると、アンカーでも鉄筋補強土でも沢山必
要になり高価となる。このため、現況安全率を1.1として設計し直した・・・。

もうひとつは、土検棒で地盤強度を計測したら、土質試験結果と合致した。土検
棒のc・φはそこそこ使えそうだ。これで、いままでN値からφを換算して、成
り立たない論理で斜面問題をやってよいのだろうかという悩みから解放されて、
斜面安定の「本当に悩むべき問題」に取り組める。

というものでした。

現況斜面の安全率を仮定して逆解析する方法が、すべてマズイということではあ
りません。場合によっては効率的なことも多々あります。ただ、この方法は非論
理的なので技術者の魂を確実に蝕みます。ちゃんとした論理を知ったうえで、習
慣的な逆算法を使うということであれば、心は救われます。

なぜ非論理的なのかというと、技術者が評価すべきは、あくまでも「現在の斜面
の安定度」だからです。これがゴール(目標)です。それにもかかわらず、逆算
法ではそのゴールを最初に仮定するからです。逆算されたcもφも何の意味もな
い数字です。

現在梅雨の中休み(降っている地域もあると思いますが)です。今年も例年通り
沢山の斜面崩壊が起きると思います。自然の侵食作用は粛々と続くので斜面崩壊
の発生は必然です。

当社が考える論理的調査・解析の方法論をご紹介します。今度の梅雨からは、技
術者魂が喜ぶ下記の方法を使いましょう。

1.崩壊が発生した。調査に行く。踏査をする。滑落崖にあるソイルパイプの跡
や位置を確認して定性的な崩壊原因を特定する。「ちゃんと踏査しよう」といっ
ても目で視える情報には限界があります。

2.崩壊地近傍の未崩壊地(側部滑落崖周辺)で、土検棒試験を行いc・φを得
る。可能であれば試料円筒を使って単位体積重量も得る。

3.滑落面でも試験可能なら土検棒試験を行いc・φを得る。(硬くて入らない
場合もよくあると思います)

4.崩壊前のモデルを作成し、土検棒で得られたc・φを使って2次元安定計算
する。ケースは、地下水のない状態(平時)、および地下水位が崩壊前の地表面
にある場合(大雨時)の2ケース。おそらく後者でも安全率は1.0を下回らないで
しょう。(斜面傾斜が急な場合には下回ることもある)

5.満水状態でも安全率が1.0を上回る場合、実際に崩壊した形状で1.0を下回る
(0.99)ときの地下水圧を逆算する。この時は被圧地下水状態なので、水圧線は
直線形状でよい。この「崩壊時水圧逆算法」はとても意味があります。

これで崩壊の瞬間の地下水圧条件が逆算できます。続いて、

6.崩壊後の地形モデルを作成し、同様に計算します。崩壊面より深い箇所が2
次崩壊をするという計算にはおそらくならないでしょう。しばしば行われている
崩壊面に対する抑止対策は、どちらかというと民生安定用です。

7.隣接地の未崩壊地は崩壊時と同様の被圧水圧条件になれば計算上安全率1.0
を下回りますが、すぐ横に崩壊地(地下水圧消散装置)が存在する中で、そのよ
うな被圧水圧が発生できるでしょうか?そういうことを「考察」します。

8.斜面が崩壊によって安定状態を獲得したことに納得がいったら、水圧が上昇
しないようにすることが最も有効な対策になると論理的確信をもって言えるよう
になります。

9.崩壊がどのようなバランス状態で発生するのかを土検棒調査を行うことによっ
て理解し、施主に説明ができるようになると、どのようにすれば安定状態を維持
できるか、あるいは未崩壊斜面の特定の場所を崩壊させないためにはどのような
予防措置が適切か、ということも論理的に意思決定できるようになります。

このように、斜面問題を曖昧にしていたc・φが現地計測できるようになると、
現状斜面の評価や科学的・論理的な対策工の選択が可能となり、技術者の魂が喜
びの声を上げ始めます。土層強度検査棒については下記をご覧ください。

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また、地盤工学会誌今月号(Vol.64-7)p.36-37に”土層強度検査棒の調査方法
と活用例”(稲垣・佐々木・太田・谷川)が掲載されていますのでご覧ください。
土検棒の英名は、Soil Strength Probe(SSP)と言います。

当社は水圧消散装置としては、排水補強パイプを推奨しています。鉄は錆びると
思われているかもしれませんが、高耐蝕性メッキを用いると相当もちます。地す
べりの集水ボーリング保孔管(サビレス)も同様です。

黒皮と高耐蝕性メッキの腐食の違い(13年間での違い)

恒久排水補強パイプは高耐食性メッキ付きだから錆びないといっても、本当かどうか実証しないといけないので、2003年3月25日から、当社の斜面で耐蝕性実験をしていました。今日(2016年4月4日)、グリーンパネル端材を使った土留柵を設置する…

有限会社太田ジオリサーチさんの投稿 2016年4月3日

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れると、それが表示されるようになるはずです。
(編集後記)
会社のHPをいま美馬君が創りなおしています。若い人たちがいまはPCではなくス
マホで情報を収集する時代なので、若い人のセンスに任せた方が良いと思います。
一つだけ注文しているのは、情報(宣伝)は常に発信し続けて、ということです。
土検棒は情報発信直後に注文が多く、そうでないときは少ないという明確な相関
があります。雨が降ると地下水位が上がるようにです。建設コンサル業界は広告
宣伝にはあまり熱心ではありませんが、当社のようなコネのない会社では、広告
宣伝こそが命綱です。(H.O)